ミスターチルドレンがドSになった日(「重力と呼吸」早速レビュー)
ミスターチルドレン、New Album「重力と呼吸」、発売日!
まずはリリースおめでとうございます!!
医学部に入学してから初のアルバム。待ちに待ったよ。
詳細は以下に。
New Album「重力と呼吸」
2018.10.3 Release
TFCC-86659 ¥2,913+税
初回生産分 コード封入 (有効期限 2019.4.30)<収録曲>
出典:Mr.Children公式
01. Your Song
02. 海にて、心は裸になりたがる
03. SINGLES
04. here comes my love
05. 箱庭
06. addiction
07. day by day(愛犬クルの物語)
08. 秋がくれた切符
09. himawari
10. 皮膚呼吸
なんだろう、こんなアルバムが今出たことがすごく嬉しくて。めでたくて。
平成最後とか、あまり言いたくないんですけど、
平成の初めにデビューして、走り続けて、平成最後にこのアルバム。
なぜこうもめでたい気分なのか。
ずばり結論。
こんなにもミスターチルドレン四人の顔が浮かんでくるアルバム、初めてだからじゃないかと。
桜井さんが一番光ってるとかもちろんなくて、四人がどーんってまとまって!私の前に来るの!どうしよう照れちゃう!(落ち着け)
いや聴けば聴くほど、怖いくらい迫ってくるの。真面目な話。
今までは曲を通して自分(リスナー)自身が浮かび上がってきていたのにね。
なんだかこれまでと違うわけです。
「君はこれが好きだよね」っていつも私に合わせてくれてた彼氏が急に、
「俺が好きなのはこれだけど?」って突き付けてくるの。
どうしてこうもドSになってしまったの、ミスターチルドレン!
紐解いていこうかと存じます。
特徴①メンバーが音に引っ張られている
このアルバムの根幹だと思います。
「重力」と「呼吸」、私はこれを人間が地球上で生きていく上での、最低限の荷物と捉えました。これだけは引き受けないと、生きていられない。
けれど「重力」と「呼吸」の二つだけ、他は一切取り払って、四人は音に身を任せた。余計なものをそぎ落として、音の向かう方向に身を委ねてみよう。そんな挑戦をミスターチルドレンの四人はこのアルバムでしたのだと思う。四人だけで。
四人だけの無意識の感覚(=皮膚呼吸)を信じて。
こんなことしたら、みんなびっくりしちゃうかな?
みんなの見たいモノ全部作っちゃおう!
そんなアイデアが浮かんだとしても、それは前作「REFLECTION」で、25周年ツアーでたっぷりやったこと。もうファンを甘やかさない。今は自分、自分たちの心が向く方に行こう、って。
こういう作り方、ミスターチルドレンはいつからしなくなったのだろう。小林武史さんがプロデュースを初めてからずっとだ、とも言えるかもしれない。そのくらい長い間、ミスターチルドレンは彼女想いの、サービス精神旺盛な彼氏だったのです。
特徴②メロディも歌詞も、凝ったところが少ない
前作「REFLECTION」が凝りまくっていて、曲数も多くて、宝箱のような作品だったから尚更。人によっては技巧的な部分が少なすぎて、削ぎ落としすぎ・手ぬいた?・コバタケプロデュースが懐かしい、なんて思いを抱くかもしれない。
ところでこの「重力と呼吸」、以下のような前例をみない桜井氏のコメントとともに告知されたことをご存知でしょうか・・
やっと新しいアルバムについて口を開けるので
思いっきり大口を叩きます。最高のアルバムが出来ました!!
「Mr.Childreを聴いて音楽をはじめました」
こんな風に話してくれる若手のミュージシャンに出逢うことがあります。
それはとっても嬉しいことなんだけど、すこし複雑な気持ちになります。
僕らもまだまだ目指すものがあるし、今も強い憧れを持って音楽と向き合っているから。だから、さっき話したような後輩ミュージシャンがこのアルバムを聴いたら、
音楽をやめたくなるような、また、もう僕らを目標にするなんて思わないくらい圧倒的な音にしたいと、
熱い気持ちでアルバム制作に向かいました。
で、その通りの音になっていると思います。是非聞いてください‼
画像引用 : TOY’S FACTORY
普通、今回のアルバムのテーマは~とか、メッセージは~とかですよね。
なのに、
若手に見せつけてやるためのアルバムです!
なのである。
しかも「目標にするってことは、いつか踏み台にして乗り越えてく存在だと思ってるんだろ?え?」って若干キレてますよね?桜井さん?笑
どんだけ負けず嫌いチルドレンやねん。
(実際に「皮膚呼吸」の歌詞で
「冗談だろう? もう試さないでよ
自分探しに夢中でいられるような 子供じゃない」
と言っているけど、ミスターチルドレンは子供なんだよね、子供でいたいんだよね、いつまでも)
でもね、不思議なのはここから。
普通ベテランが自分の力を見せつけるなら、経験の長さを味方につけて、
こんなテクも、こんな装飾も、俺たちにはできるんだぜ!って超絶武装して出て行きそうでしょ。
それがさ。凝ったところが少ない、つまり
「心は裸になりたがる」の曲名通り、裸一張羅で後輩たちにドヤったのです。
でもそれが全く弱々しくないの。裸一張羅が四人、がっしり一体になって突進してくるのよね。
重い。これは重いよ。この重さが音にありありと出ている。
まるで自分たちが、まだ君たちと同じデビューしたての若手だとしても(つまり同じスタート地点に立ったとしても)、圧倒的な才能を持った、本物のバンドはうちらだぜ!と言わんばかりの自信。
「皮膚呼吸」するように、ミスターチルドレンはずっとずっと、自分を試し続けてきた。まだまだ「未完」だって、いつだって立ち止まっちゃいなかった。
だから、この自分たちに追いつけるはずない。
どうですか、目の前に四人が立ちはだかってきたでしょ!(どーん!)
特徴③苦しみのどん底にはいない
インタビューで、最近の子(自分の子供たち)は、自分たち昭和の人間のようにドラマチックには生きていない、だから歌の中で希望と絶望が行ったり来たりするのは時代錯誤のような気がする、と語っていました。
その言葉通り、別れの悲しみを歌う歌であっても、結局は必要な苦痛であると悟る。
血が流れるような痛みも、過去の思い出として胸に温かくしまっておける。
苦しくて、どうしていいかわからない、壊れそう、でも這い上がる、みたいな「終わりなき旅」ばりの緩急がほぼありません。
あくまでも大人で冷静な位置からの曲ばかりなのです。
私個人としては、正直なところ、ミスターチルドレン=緩急の申し子!
CDとライブバージョンが違うのこそミスチル。音程がズレるのがむしろ好き。
人間らしくて、不器用で弱い部分をさらけ出して、どん底を乗り越えていく姿が好き。
だから、え!これがミスチル!?という驚きも正直隠せませんでした。
・長年のファンは、この方向性をどう見るか
でもアルバムを何周か聴いているうちに、想像もしなかったベクトルに向かって、好きが加速しはじめたのです。適度なドSに、心打たれた。
そもそもマンネリなど考えられないほどミスチルのことは好きだけど、さらにさらに好きになった。
それは四人の挑戦への覚悟と心意気のようなものを、思いっきり感じたから。
だからあえて断言したい。
「重力と呼吸」は長年ミスチルを愛してきた人ほど、いとおしく感じるアルバムだ
と。
・だがしかし(余談)
ただ一方で言えるのは、結局きっと私たちチルオタは「皮膚呼吸」のような
「ひとりの人間」が見える曲が、どうしても好きかなのでは、ということ…
実際のところこの方向性、賛成なのか反対なのか、気になるところではあります。
おわり〜◎